このページは、「なつぞら」の中の仲努(井浦新)のモデルになっている森康二(もりやすじ)さんを紹介します。

後半には、仲さんと森康二さんの違っているところや一緒のところなどを見ていきます。

「なつぞら」のアニメーション編は、東映アニメーションが資料を提供してくれていることから、かなり詳細に描かれています。

なので、朝ドラ「なつぞら」を見ているあなたなら楽しめる記事になっていると思います。
森康二はどんな人?

森康二(もりやすじ)さんは、1925年(大正14年)に鳥取県鳥取市で生まれです。日本が統治していたころの台湾で幼い頃は生活していました。

アニメーションとの出会いは、戦争が行われていた最中。政岡憲三さんの「くもとちゅうりっぷ」でした。

その後、政岡憲三さんにお願いして「日本動画」に入ったんだよね。

しかし、その「日本動画」は経営破綻してわずか2年で森康二さんは、失業します。

その後、なんとか食いつないだ後に「日本動画」が「日動映画」になり生まれかわり、そこに森康二さんも入社します。やがて「日動映画」は、東映動画(現在の東映アニメーション)に吸収合併されました。

その後は、東映動画で原画担当をとつめ、「こねこのらくがき」や「白蛇伝」などで成功をおさめます。
森康二の仕事

森康二さんの仕事ぶりは、どういったものだったの?

森さんは、政岡憲三さんを受け継いでいるので正統派で、緻密で繊細な絵を描いていました。細部まで、自分で描きこだわり抜いたもの。

そのあたりは、一緒に原画担当をしていた大工原章さん(井戸原昇(小手伸也)のモデル)とは、異なっていたんですよね?

そうだね。大工原章さんは、大雑把なところがあったからね。

その後、森さんはどんな作品を手掛けたの?

「こねこのスタジオ」や「少年猿飛佐助」に携わったけど、殺戮のシーンなどが不得意な森さんは力を出し切れなかったんだ。
日本発の作画監督

その後、森さんはどんな活躍をされたんですか?

その後も会社や監督との折り合いがつかない時があったのですが、監督が芹川有吾に変更になってから作画監督を任されるようになったんだ。

作画監督って、当時はいなかったんですよね?

うん。日本で初めての試みで、これまで描く人によって画風が異なったのを統一する役割を作画監督の森さんは担うことになったんだ。

そのアニメが「わんぱく王子の大蛇退治」ですよね?

うん。「わんぱく王子の大蛇退治」の大ヒットにより、作画監督がそれ以降も置かれるようになったんだ。

新しい役割を森さんが作ったんですね。

そうそう。その後に、鉄腕アトムがテレビで放送されてね。そこから大きく業界が変化していったんだ。
テレビアニメ時代の到来

鉄腕アトムが放送開始したのが1963年。ここからどのように業界が変化していったのですか?

毎週、アニメがテレビで放送されるようになったことでスケジュールがどんどん短くなっていったんだ。緻密に仕上げる森康二さんのスタイルは、厳しくなってくよね。

その頃から、どんどん若手が起用されていくことになるの?

森康二さんは、38歳。大工原章さんは、48歳になってたからね。テレビアニメによる変化の荒波がやってきたんだ。なので、テレビアニメは若手が中心になって制作してた。

その後、森康二さんはそんな作品に携わっていたの?

長編アニメ「太陽の王子・ホルスの大冒険」に原画担当として、参加しています。この作品は、監督高畑勲さんをはじめ、宮崎駿さんや奥原玲子さん、小田部羊一さんなどそうそうたるメンバーが一緒に作っています。

森康二さんが描いたキャラクターの評価は高かったけど、興行としては失敗に終わった作品ですよね。

うん。その後に作画監督をした「長靴をはいた猫」や「どうぶつ宝島」の方が作品として評判が良かったんだ。
ズイヨー映像への移籍

それから、東映動画で労働紛争が大きくなっていったんですか?

そうそう。労働紛争の影響で、どんどん優秀な人がやめていってね。森康二さんも、紛争後に会社を去ってズイヨー映像に移籍したんだ。

そこで、「山ねずみロッキーチャック」に参加したんですか?

そうそう。途中からだけど、作画監督を担当したんだ。動物ものだったので、スケジュールはきつかったけどうまくいったんだ。

ズイヨー映像に、あとから高畑勲さんたちはやってきたのですか?

そうそう。高畑勲さんも、宮崎駿さんも小田部羊一さんもみんな後からズイヨーに来てね。一緒に作ったんだ。

どんな作品を一緒に作ったのですか?

「アルプスの少女ハイジ」や「フランダースの犬」などかな。マジンガーZなんかも森康二さんが携わっていますね。

その後ですか?学校の先生していたのは?

うん。東京デザイナー学院でアニメーションの講師をしていました。

小田部羊一さんや奥原玲子さんを東京デザイナー学院に紹介したのも森康二さんですか?

そうだね。面倒見の良い人だったので、高畑勲さん、宮崎駿さん、小田部羊一さんを育てたといっても過言ではないと思います。
なつぞらの仲努と森康二の違い

それでは、ここからは、朝ドラ「なつぞら」の仲努とモデルになっている森康二さんがどのように違っているのか見ていきましょう。

実際に森康二さんのことを見てきましたが、仲さんはモデル通りに描かれているなあって思いました。

例えば、どんなところ?

最初行っていた会社が倒産して、東映動画になったところは「なつぞら」でも描かれていました。あと「白蛇姫」は「白蛇伝」とわかりやすい返還でした。他にも・・・

ほかにも?

原画担当が2人しかいなくて、セカンドがいたというのも実際にあった話で同じですね。

じゃあ、逆に違うところってある?

違うところは、探す方が難しいって感じですが・・・しいていうなら、なつの入社の経緯が違いますかね。「なつぞら」では仲さんに誘われて入社しましたが・・・森康二さんが奥原玲子さんを誘った事実はありませんから。

やっぱり、東映アニメーションが資料をNHKに提出しているので、それだけしっかりモデルを描いているんだね。

そうだと思います。今後も森康二さん通りに仲さんが描かれるのか楽しみですね。

特にどんなところが楽しみですか?

高畑勲さんや宮崎駿さん、小田部羊一さんを育てるところですね。「なつぞら」だと坂場一久(中川大志)や神地航也(染谷翔太)になります。

私も注目してみてますね。