今回は、NHKの朝ドラ「エール」の中に登場する佐藤久志(山崎育三郎)のモデルになっている伊藤久男さんです。伊藤久男さんは、本名を伊藤四三男(しさお)という変わったお名前です。
なぜこの名前に命名されたかというと、明治43年生まれだったからです。なかなかセンスを感じますね。朝ドラ「エール」の中では、古山裕一(窪田正孝)と佐藤久志は幼馴染として描かれています。
実際のところは、古関裕而さんと伊藤久男さんは幼馴染だったのでしょうか。気になりますね。では、伊藤久男さんについて詳しく調べていくことにしましょう。
古関裕而と同郷
伊藤久男さんは、古関裕而さんと同じ福島出身です。音楽が好きという共通点がありますが、生まれた家はかなり違っています。
古関裕而さんの家は呉服屋「喜多三」ですが、伊藤久男さんの家は旧家ですが県会議員・衆議院議員を輩出した政治家一家です。
裕福な家庭ということもあってか、ピアノが家にあったので没頭していました。旧制中学の頃にはピアニストになりたいと考えていますが、家が政治家一家ですから当然反対されてしまいます。
しかし、そこは信念を貫いたということで東京農業大学に進みますが、後にはやめて帝国音楽学校に進みました。上手くカモフラージュしていたのですが、親にバレてしまい仕送りも止められます。
致し方ないですが、生活していくためにはお金が必要です。コロンビアでアルバイトをして、生活費を稼ぎます。このアルバイトがその後、伊藤久男さんの人生の転機となっていきます。
デビューした時期は日本が戦争に突入していくタイミングであり、これは伊藤久男さんが望んでいたわけではありません。伊藤久男さんとしての初めてのヒット曲は、1938年の「湖上の尺八」です。
これは日中戦争を題材とした曲です。この他にも、「暁に祈る」「白蘭の歌」などヒット曲を出していきます。このことがのちに伊藤久男さんを苦しめてしまうことになります。
時期が時期だけに、戦争賛美の歌を歌わざるを得なかったですが敗戦直後からその責任感に押しつぶされそうになります。現代から見ていると、戦争とは遠い過去です。
今でも戦争は世界各地で起こっていますが、当事者として戦争をしてからは75年以上経っています。自分の歌った歌で勇気づけられ、多くの兵が戦地に送られていった。この事実は消えることがありません。
酒に逃げていましたが、戦後カムバックを果たしてヒット曲を出していきます。カムバックまでに2年かかりましたが、見事に吹っ切れました。
古関裕而の作品を多く歌っている
同じコロンビア所属である古関裕而さんとは同郷ということもあって、多くの作品を伊藤久男さんが歌っています。「イヨマンテの夜」「君愛しき人よ」「栄冠は君に輝く」など多くの歌を歌っています。
NHKの紅白歌合戦にも11回出場しているということです。伊藤久男さんの歌声は抒情的なバリトンが効いており、古関裕而さんの曲とマッチしていました。曲は歌い手によって変わります。
歌はその人の色を出します。歌姫と呼ばれる人は美空ひばりさんを始め、ヒーリング効果のある歌声を持っているのです。伊藤久男さんは、聴く人を魅了する歌い手だったのでしょう。
伊藤久男さんの性格は、豪放なもので酒が好きだったのは前の題でお話ししました。誰からも好かれる人気者、「チャーさん」の愛称で呼ばれています。
私はこのことを知って、ある人物を思い浮かべました。同じように酒が好きで、誰からも慕われいまだに根強い支持がある人物です。その人は田中角栄さん、元首相でありロッキード事件で有名でしょう。
「角さん」と呼ばれて慕われていたことと伊藤久男さんが田中角栄さんと似ていると思ったのは、酒に逃げてしまうような部分もあるからです。
また潔癖症であり、消毒のためにアルコールを含ませた脱脂綿を常に持ち歩いていました。現在だと、消毒用の濡れティッシュを持ち歩いているということと同じです。
閉所恐怖症でもあり、エレベーターには乗りませんでした。後年は糖尿病に侵されてしまい、インスリン注射でしのいでステージに上がっていました。酒の飲みすぎには注意しなければなりません。
古関裕而さんと同郷であり、古関裕而さんが作曲した曲を伊藤久男さんが歌うという組み合わせが多かった二人ですが、同時代を生きたという共通点もあるでしょう。
年齢も1歳しか違いませんし、この辺りが朝ドラ「エール」の中で2人を幼馴染として描いたゆえんだと思います。朝の連続テレビ小説「エール」では、山崎育三郎さんが佐藤久志として演じます。
俳優として、ミュージシャンとしてこれから活躍が期待されているので、注目しましょう。また、奥様は元モーニング娘の安倍なつみさんです。
古関裕而さんが作曲した曲を歌うことが多かったので、登場機会は後半になると増えていくと思われます。ミュージカルにも出演しているので、歌唱力にも期待したいと思います。
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