松本四郎(林部長/橋本じゅんのモデル)はどんな人だったの?

松竹楽劇部に、松本四郎(まつもとしろう)という人がいました。NHKの2023年の朝ドラ『ブギウギ』に登場する林部長(橋本じゅん)のモデルにもなった人物です。

今回は、その松本四郎さんについてどんな人でだったのか。どんなことをした人物だったのか具体的に見ていきます。

松本四郎の経歴

まずは、松本四郎さんの経歴を振り返ってみましょう。生まれたのは1898年(明治31年)1月1日でした。1920年(大正9年)には、東京音楽学校本科器学部を卒業します。

1921年(大正10年)3月、客員として宝塚少女歌劇団に入団しています。1922年(大正11年)の松竹楽劇部(現在のOSK日本歌劇団)の発足では、招聘されています。

 

松竹楽劇部は松竹創業者の白井松次郎さんの提案で発足。発足に伴って、様々な人物を招聘しましたが、その中に宝塚少女歌劇団の作曲家、松本四郎さんがいたのです。

1930年(昭和5年)には、大阪松竹歌劇団(OSK)で「春のおどり」のテーマソング「花咲く国」を作曲。ただ、クレジットは松本四郎ではなく、松本四良でした。

 

「花咲く国」は、公演「春のおどり」で初披露されました。ところが、こんなエピソードが残っています。

フランスから来日した人気歌手のリュシエンヌ・ドフランヌさんが紙吹雪を吸い込んでしまい、歌を歌えなくなるのです。

 

そのアクシデント後は傘を持って歌うようになりますが、それが現在まで続いて、いまでは傘を持って歌うのがおなじみになりました。

「花咲く国」は大阪だけではなく東京の松竹歌劇団(SKD)でも使われていましたが、松本四郎さんの東宝への移籍に伴って使われなくなります。

 

ただ、OSKではそのまま使われ、現在のOSK日本歌劇団にも歌い継がれています。因みに、「花咲く国」は楽天イーグルスの応援歌にもなりました。様々な場所で使われていることになりますね。

1930年(昭和5年)2月には、松本四郎さんは大阪道頓堀松竹座で松本四良の名で松竹座大管弦楽団の指揮を執りました。

 

演奏された曲はリムスキー=コルサコフ「復活祭序曲」やムソルグスキー「裸山の一夜」などでした。

1944年(昭和19年)当時は東宝古川緑波一座の文芸部に所属し、その後ニッポン放送にも在籍しました。亡くなられたのは1970年(昭和45年)1月1日でした。

笠置シヅ子デビューのきっかけを作った松本四郎

松本四郎さんといえば、笠置シヅ子さんのデビューのきっかけを作ったことでも知られています。

経緯については笠置シヅ子(笠置シズ子)著の「歌う自画像 私のブギウギ傳記」の中でも述べられていますが、簡単にまとめてみましょう。

 

笠置シヅ子さんは、宝塚少女歌劇団の試験に落ち、ガッカリしていましたが、近所のおばさんから「道頓堀にも宝塚に似たところがある」と言われて、松竹楽劇部の事務所に向かいます。

そこで自分の気持ちを必死にアピールします。それを事務所の奥で聞いていたのが、音楽部長の松本四郎さん。

 

「そんなにしゃべれるのなら、身体も悪くないだろうから、明日から来なさい」と二つ返事で受け入れてくれたそうです。

おかげで笠置シヅ子さんは見事に松竹楽劇部に入団できたというわけです。松本四郎さんは面倒見が良かったことでも知られています。

 

笠置シヅ子さんは「豆ちゃん」と呼ばれるほど背が小さかったのですが、松本四郎さんは牛の生き血を瓶に詰めて送ったそうです。指導も熱心でした。

松本四郎の作曲作品

松本四郎さんは、生涯にわたってたくさんの作品を作曲していますが、その中の一部を紹介しましょう。

松竹楽劇部での作曲作品

  • 春の唄(松本四良名義・後の「桜咲く国」)
  • 彼女の唄 帝キネ「何が彼女をそうさせたか」(松本四良名義)
  • 天神祭どんどこの唄 松竹レビュー小唄(松本四良名義)
  • さくらの唄 松竹レビュー主題歌(松本四良名義)
  • 輝く日本 松竹大レヴュー「秋のおどり」(松本四良名義)
  • アルルの女
  • モンゴールの王子
  • 春のおどり ラッキイセブン
  • 秋のおどり・輝く日本
  • 何が彼女をそうさせたか(映画の音響担当)など

東宝在籍時参加作品

  • 日劇ステージショー「夏のおどり」
  • 歌う不夜城
  • 日劇夏のおどり
  • ルンバ誕生など

ニッポン放送在籍時作品

  • ポッポちゃん 連続ドラマ
  • 「愛の鐘」
  • 「姫君と鏡」など

林部長のモデルになった松本四郎

NHKが2023年後半の朝ドラ『ブギウギ』には、林嶽男という音楽部長が登場しますが、松本四郎さんがモデルだと言われています。

橋本じゅんさん演じる林嶽男は強面ですが、やさしく面倒見がいい人。梅丸少女歌劇団(USK)の音楽部長兼現場責任者です。

 

『ブギウギ』では大阪の銭湯の看板娘としての花田鈴子(趣里)も登場しますが、彼女がUSKに入団するくだりは笠置シヅ子さんのエピソードから取られています。

そのほかにも松本四郎さんと林嶽男には共通点が多いです。松本四郎さんについて知ろうと思ったら、『ブギウギ』を見るのが一番はやいです。

 

全く同じ設定ではありませんが、朝ドラ「ブギウギ」は基本的にモデル通りに描いている作品です。今後、どのような形で林部長が登場してくるのか。

松本四郎さんと林部長がどう違ったのか。違いを見るとより朝ドラ「ブギウギ」を楽しめるとおもいます。



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